G2DOKKA-WANDERLUST

ドイツ発。親子3人車中泊放浪旅のキロク

日本ードイツ大陸横断_シベリア道中⑬ランクル誘拐事件(4)

事件から三日目、ある男から電話があった。

「KOX(クホ)という男に電話をかければわかる」

それだけ言って切られてしまった。

何だよこれ、火曜サスペンス劇場かよ。

まったく見当もつかないので、警察にどういうことかと尋ねたら

クホのことを知っているという。

そして、電話番号を教えてくれた。

一体何者なのか?

友達が恐る恐るクホに電話をすると、今自転車に乗ってる最中だから

10分後にかけなおしてくれと言われた。

電話を切ったその友達の顔がなぜか驚きの表情だった。

なぜならその電話の相手はとても親切な感じで、教養がありそうで、

とても印象の良い話し方だったからだ。

クホは盗難車絡みの小さなビジネスをしていて、もし何か情報が

あったらすぐに連絡をするとのことだった。

とにかく彼は、役所かどっかの人じゃないかってぐらい、とても丁寧な

対応だったらしい。

事件から3日後に重要と思われる情報が2つも見つかったので

少し気分を持ち直し、前向きに待つことにした。

翌日は市場で会ったあの男から電話があった。

車があったらしいけど6000ドルじゃないと渡さないと犯人が言ってるらしい。

いきなり値上げ?

きっとこいつが1000ドル上乗せして仲介料をとる魂胆なんだろう。

でも、確実に戻ってくるなら6000ドル払うと伝え、犯人と思しき人物との

交渉を続けてもらうことにした。

数分後、かけ直してきた男が一言

「車違いだったらしい、ランクル黒じゃないよね?」

一同ズッコケ。

頭の上からタライが落ちてきたぐらいの衝撃発言だった。




週末になり、友達が気分転換に郊外へ出かけないかと誘ってくれた。

出発する前に、クホに電話をしてみたが、相変わらず情報はないという。

だけど、テレビで流されている連絡先を自分の(クホの)電話に変えたら

どうかと提案され、私達はそうすることにした。

そして月曜日になったらテレビ局に出向くと伝え、久々息抜きに出かけることにした。




都市部に住むロシア人は「ダーチャ」呼ばれる週末過ごす小さな家を

持っている。

この日出かけたのも、友達が所有しているダーチャ。

イルクーツクからバスを乗り継いで約3時間。携帯の電波も届かない

森の中にある。

ダーチャにはソーセージみたいにパンパンに太った犬と、83歳になる

バブーシュカ(おばあちゃん)が待っていた。

バブーシュカの手がける農園はとても広く、所狭しに色んな野菜を育てて
いた。

畑の水まきをしたり、野菜を摘んでサラダを作ったり、一瞬でも車の

ことから離れられた、楽しい週末だった。

月曜日になって、もう一度警察に行った。

車の情報、そして改めて今やり取りをしているクホという男について訪ねると

とんでもない答えが!


なんとこの男は、この辺の車窃盗グループを仕切るボスだったのである。

しかも、逮捕暦もある。

だけど、なんで警察は捕まえないのか?

彼を釈放してからも毎日のように窃盗事件が起こり、

彼の手元に現金が流れていくという。

多分相当頭がいいか、警察を買収しているとしか思えない。

捕まらない自信があるから、正々堂々と自分の名を名乗り

そういえば、警察に行ったかどうかなんて聞かれなかったし

自分の番号をテレビで流せとまで言えるんだ。

そして警察は犯人かもしれない奴の電話番号を被害者の私たちに

教えて、自分たちで勝手にやってくれと言ってるようなもんだ。

「THATS RUSSIAN CRIMINAL、彼のビジネスだから立ち入れない」
みたいなことまで抜かす。

立ち入れよ、警察なんだから!

警察のプライド全くなし。

昼間木陰にパトカー停めて、昼寝してる奴もいるぐらい。

信用度が低いのも納得だ。

今一番私たちに必要なのは、マフィアの友達だ。

そっちのほうがよっぽど早く解決しそうな気がする。

マフィアは悪い人たちだけど、曲がりなりにもマフィアの法の下

それを守って生きている。

役人は国家の法の下で、いとも簡単に国民をも欺く。

警察よりマフィアのほうが絶大な信頼を得ている都市もあるそうだ。

実際会ったら怖いんだろうけど・・・

・・・・週明けから今日まで、有力な情報は無い。

ただ、日に日に街で声を掛けられる率が高くなってきている。

昨日は幸運を祈ると言うおじさんから、犬のぬいぐるみまでもらってしまった。

そろそろこの街にいるのも、気まずくなってきた。

旅を続ける決意は固まりました。

やはり夢だし、まだ2ヶ月しか経ってないのにここで終わりにしたら

もったいないし、何よりも悔しい。

沢山の物を失ったけど、命がちゃんとある。

今助けてくれてる沢山の人々や、日本で応援してくれてる家族や友達にも
もっともっと、旅の楽しいところをを伝えたい。

なので今週中に車が見つからなかったら、新しい車を買って再出発します。