G2DOKKA-WANDERLUST

ドイツ発。親子3人車中泊放浪旅のキロク

日本ードイツ大陸横断_シベリア道中⑫ランクル誘拐事件(3)

モスレムキャップを被った男は中央アジアのどこかの出身の
顔立ちで、決して悪そうな人には見えない。

とにかくロシア語が分からないので、確実ではないけど
マーカスが単語を拾って男の言うことを解釈すると

「車を盗んだかもしれない奴を知っている。
タクシー代を払えば、そいつの所にに連れて行く。
もしそこに車があれば、その場で金を払い車は返してもらえる。
ただし、夜に限る」

との事だった。

そんな危ないことできるはずがないし、こっちの要求を譲るつもりはない。

「昼間人通りがあるところに車を持ってくれば、お金は払う」

これが私達が提示する条件だ。

交渉は難航気味。

1時間ぐらいその場で待たされ、戻ってきた彼が一言

「5000ドルで買い戻せるってよ」

それが払えなければ、車は売り飛ばすということ。

まさに車誘拐だ。

相手の言い分は分かった。

だけどここで全ての交渉をするのは危険だと思い、考える時間と
通訳が必要なので一旦男と別れて、後で連絡することになった。

彼はこの会話を交わしていた場所の、目と鼻の先に住んでいて

「俺はここに住んでるから、いつでも来ていいよ。
寝るとこなかったら泊めてあげるよ」

といって家の中に入っていった。

なんともフレンドリーな奴。

しかし、この状況、ますます訳が分からなくなった。

今さっき犯人らしき人と話していた奴が、自分の携帯番号を教え、

家まで案内して、警察に言うなとか一言も言わず

いつでも電話しきてね、なんて。

いったいこいつは何者なんだ?

犯人の一味なのか、タダのからかいなのか。。。

とりあえず、友達を呼んですぐさま警察に連絡してもらった。

すると、すでに一度会っている警察が、私服で駆けつけきた。

そして状況を説明し、さっきの彼の所に行へ向かった。

彼の家のチャイムを鳴らすと、妻らしき人が出てきて
彼は今は留守で市場にいるとの事だった。

市場に向かう。

男の店に着き、駆け付けた私服警察の事を通訳だといって紹介すると、
彼の顔つきが一瞬で変わってしまった。

警察の人も、もっと普通の人らしく挨拶の握手をして
普通に話しをすれば良いものの、その光景はまさしく取調べ。

話が終わり市場を出て、男が何を言っていたのか警察に訪ねると
「車の場所など知らない。探すのを手伝うと言っただけだ」と
さっき言ってた事と、まるきり違うことだった。

この使えない警察のせいで、交渉が台無しになってしまった。

マーカスはこの事に腹をたて、でも絶対知ってるはずだからと
今度は警察抜きで男に会いにいった。

すると男はやはり、さっきのは警察だと疑っていたらしく
今度はちゃんと話してくれた。

ウソかホントか分からないけど、昔その男の弟の車も盗まれ、

警察に頼んだけど一向に戻ってこなくて、ある人から

窃盗グループの番号を聞きだし、警察抜きで交渉したところ

お金を払って、車が戻ってきたらしい。

彼は今そこと連絡を取り合ってる最中だという。

さっき嘘をついたのは、警察だと疑っていたことと、妻と子供3人も

いるので、捕まりたくないからという事だった。


こんなにバタバタしている毎日なのに、一日が物凄く長い。

体を動かして駈けずり回ってるときはいいけど、ふと我に返ると

今起きてる事の大きさに打ちのめされる。。

気分の浮き沈みが半端じゃない。

待つことが苦手な私にとっては、この日々はまさに拷問だ。

長い一日が始まる朝がやってくる。

1日の始まりが、最悪な気分の毎日。

しかし明日もこの朝は、必ず時間通りにやってくる。

夢であったら、どんなに良いことか。

一人じゃないから心強いけど、それでもやはり、キツイものはキツイ。

 


そして。

この日の翌日、事件から3日後に、またありえない状況に

遭遇することになった。