G2DOKKA-WANDERLUST

ドイツ発。親子3人車中泊放浪旅のキロク

日本ードイツ大陸横断旅_シベリア道中②

なかなか充実した旅が続いております。

先週のある日、とある町のセメント工場で作業帰りか何かの囚人の集団に

なぜか出くわして囲まれ、質問攻めにあった。

あの人達、ああやって一般人と接触が出来るなんて、謎すぎる。

 

また別のある日、トラを飼育している人を訪ねたら、地獄の動物園みたいなところで

サイズの合わないゲージに入れられた熊が、発狂寸前で自分の手首を

噛みながら、トラクターのような声で小刻みに泣いていた。

精神がおかしくなってるのは一目瞭然で、こんなの見る人が見たら

動物虐待の罪で糾弾されることになるだろうな。

熊を見る機会もそうないけど、泣いてる熊なんて見るのは最初で最後にしたい

気分だ。

その夜は、檻から脱走した熊の夢を見た。

 

 

 

ウラジオストクから北上すること700キロあまり、ここにハバロフスクという
きれいな町があり、傍にはアムール川というでっかい川が流れている。

土曜日にこの町に着いて、例のごとく川沿いで寝床見つけビールを飲んでいたら

ゴッホに似たおじいさんがやってきて、なんだか噛みあわない会話を

しばらく交わしていた。

するとちょっと離れたところに連れのおじいさんが寝っころがっていて
「ハローフレンド、プリーズ」と、寝っころがってる隣に招かれて

宴会が始まった。

しばらくすると川辺の草むらの中から、魚釣りに失敗し寒さに震えた少年が

二人現れた。

そして焚き火の前に座るや否や、いきなりタバコを吸い出した。

まだ10歳ぐらいの子供で名前はローマとゴーシャ。

ローマは寝っころがったじいさん(名はアリョーシュカ)の孫で、酒まで飲み始めた。

すでにオッサンの貫禄。


まあ、ホントにワイルドな子供たち。

しばらくするとベロベロに酔っ払ったおじさんが車でやってきて、

近づいてきた途端に、いきなり怒鳴られた。

多分怒ってるんじゃないんだろうけど、目とか完全に行っちゃってて

かなりの至近距離でずーっと怒鳴っている。

アリョーシュカが、歓迎してるんだよと言ってくれて一安心だっけど。

まぁ、凄いやつがきたぞ。

ずっと叫んでるし、軍歌みたいなのを歌いだしたり言葉というより

体の全部を使って、何かを搾り出すように話しかけてくる。

パワーが有り余って仕方なくて、煙がプシューッと出てきそうな勢いで。

ボディーランゲージの世界大会があったら確実に優勝するでしょう。



言ってることが一切わからないのに、何かをずっと大声で言われてて、

頭が痛くなってきてた。

しかも10秒に一度ぐらい、すべての文末、なんなら文中にも「ヨシキン コット」

という口癖のような言葉が加わる。

それが気になって気になって、仕方なかった。

そして一方的に存分に叫んだ挙句、またベロベロになりながら車で去って行った。

アイツはいったい何なんだ!!!


静寂を取り戻し、その後はアリョーシュカが魚のスープを作ってくれた。

ロシアでは魚のスープを「ウハー」と呼ぶらしい。

ぶつ切り魚で出汁を取り、ジャガイモと塩を加えただけのシンプルなスープ。

アムール川で摂れた魚をアムールビールを飲みながら、アムール川のほとりで

赤い月夜に照らされながら、みんなで食べた。

旅の情緒に浸らない訳がないw

少し怖い思いをすることはあるけど、行きあたりばったり、その日に出会った

そこにいた人達と過ごす時間と言うのは、こういう旅ならではなのでしょうか?

なんだかすごい経験をしているような気がしている。

ロシア人のイメージも、とてもポジティブなものにガラッと変わったかな。

 

私達はこの河原でテント泊し、次の朝8時ごろからまたヨシキンおじさんが

やってきた。

朝からエンジン全開で、ウォッカを飲み干してきたようです。

さすがに朝からヨシキン連発はきついので、去るまでテントの中で待って

会わずに済んだんだけど、夕方アリョーシュカの家に行ったら、また会ってしまい

そのまま奴の家に連れて行かれてしまった。

しかし意外や意外、けっこう立派な家に住んでいて「バンニャ」という

ロシア式サウナを用意してくれたり、奥さんの家庭料理まで付いてきて、

ベットまで用意されていた。(強制お泊りコース)

ルースキーバンにゃ
   
こんないい奥さんのダンナが、この飲んだ暮れのヨシキンだと思うと、

少々気の毒と思いきや、家に帰ったヨシキンは着くなり「しっかりしなさい!」と

ホッペをピシャっと引っぱたかれいた。

ロシアの母ちゃんもまた強し!!

あっぱれ、あっぱれ。

濃い週末の締めくくりは、ウルルン滞在期さながらお礼の一品、味噌汁を作って
ヨシキン家を去りました。

最終的には、いいおじさんだった。

最初の罵声も今思えば歓迎の挨拶だったんだろうし、こちらの都合もよそに

勝手に家に連れてって、ありったけのオモテナシを受けた。

 

もちろん、お別れの言葉もヨシキンコット。

すこし寂しそうに、充血した目を泳がせながら見送ってくれた。


              ≪ヨシキン家のみなさんと≫