G2DOKKA-WANDERLUST

ドイツ発。親子3人車中泊放浪旅のキロク

日本ードイツ大陸横断旅㉚タジキスタン_ワハン回廊

遊牧民の朝は早かった。

女性たちはヤクの乳搾りに出かけ、私たちは放牧しに行くおじさんたちと朝ごはん。


パミールの朝食は「シールチャイ」

紅茶に牛やヤギのミルクを入れて、その中に塩とバターを溶かして

パンを浸して食べるというのが一般的のようで。

 

早速頂きましたが・・・・なんともいえないお味。
昔飼っていた犬にあげてた餌を思い出した。

 

お別れの時。

おばあちゃんが私達の車に積んである、給水用のタンクをしきりに

欲しがっていた。

困ると言えば困るのだけど、日本製で頑丈なものだし、もう一つあるし

この一家のお役に立つこと間違いないと思ったので、差し上げた。

こんな遊牧民体験をさせてもらった、感謝の気持ちも込めて。

おばあちゃんが子供のように喜んでいたのが、嬉しかった。



みなさんとお別れして、いよいよこの旅で一番楽しみにしていた

ワハン回廊へ向かう。

 

ワハン回廊とは、アフガニスタンから見ると、東の方にニョキっと

袋小路状に伸びているところで、パンジ川を境に北側にタジキスタン

東側に中国、そして南側はヒンドゥクシュ山脈を境にパキスタンがある。

 

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道沿いにある大きな「ZorKul」という湖の辺りから、タジキスタン

アフガニスタンの国境線がバリ線みたいなので区切られてるのが

見えるようになってきた。

そのうちバリ線もなくなって、道沿いを流れるパンジ川が国境線というふうに

なってくる。

川は浅瀬の場所もあるので、 渡ろうと思えば余裕で渡れるけど、

見つかったら、即射撃らしい。

 

 でも、とにかくこの渓谷の秘境感ったらない。

こういう所、ナショナルジオグラフィックでしか見たことないし!
             

向こう岸はアフガニスタン  

 

ワハンに来て、しばらく走ったところで今日は泊まることにする。

と言うのも、泊まる所がこの川沿いにしかなく、ということはアフガニスタンとの

国境で野宿するのと全く同じで、さっきまで内心ソワッっとしてたんだけど

ここにきてマーカスに不満をぶちまけた。

なんか私達、無防備すぎるのではないかい?

しかし彼は、ここはタジキスタンなのに何の心配があるの???と

なかなか分かってくれない。

確かにそうだけど、川幅5mもなくてバリ線ももうなくなっていて、

あっち側のアフガニスタンの人々が何をしているのかが分かるぐらいの距離。

アフガニスタン=紛争地帯、タリバン、テロリスト」

名前を聞けば即座に浮かぶ負のキーワード。

しっかりと自分にも刷り込まれていることが、リアルに分かる。

だって、今来てるし!

私の恐怖心は、ジワジワと絶頂に達しそうになっていた。

しかし他に泊まれそうな場所もないので、仕方なくそこで1晩過ごすことになった。


夜になって、こんな所で寝泊まりすることになった流れから、

政治的な話が始まった。

なんでテロが起きたか、その前にアメリカがどういう国だか考えたことがあるか。

中央アジアや中東の歴史の話から宗教の話になり、なぜ戦争がはじまるのか、

なんでアメリカは戦争をやめられないのか。

話がヒートアップしまくった。

そういう話をすれば、私の何倍も知識があるマーカス。

授業を受けてるみたいで、面白い。

私も私なりに世界情勢は気になるし、色々考える時だってある。

それでも、知らない事、知ったかぶりな事が多く

平和ボケのニッポン人とは、私の事だと思った。

 

お勉強が足りませんで、ハイ。

 

たしかに情勢が不安定なところはあるし、危険区域だってあるし

まだまだ沢山の人が犠牲になってるのも事実。


ってこれはアフガニスタンの話。

5m先の国の話。

近いなー。

ここはタジキスタンだし、内戦なんてとっくに終わってるし、すぐそこに

アフガンのおっさんがいるけど、どこにでもいる普通のおっさんなんだ。

マーカスと色々話をして、新たにいろんな事を教えてもらって

ネガティブなフィルターがぺロッっと一枚はがれた感じ。

考え方次第。

明日からの国境の旅は大いに楽しめる!

と思うことにして、だけど恐怖が多少くすぶってる感が否めないまま

ワハンの旅は続き 、次の日からも同じような川沿いで寝床を探す。


向こう岸のアフガニスタンには、馬やロバに荷物をどっさり載せた男たちが

西の方にむかって行くのが見える。

後で聞いたら彼らはパキスタンから来ていて、バザールで商売する人達だと

言っていた。

シルクロードを旅するキャラバンは、きっとこんな感じだったんだろうな。

ナショジオの表紙を飾れそうな少女

 

昼間走るワハン渓谷は、とにかく素晴らしいの一言。

こっちに回って来て、大正解だった。

道のクオリティーはともかく、こんなところに道路が通ってるってことも

すごいことだし、

5000m級の巨大な山々、どこまでも深い谷はこの世のものかと

錯覚する。

あれ、惑星ですか、ここ??

地球が剥き出しな感じ。

 

青すぎる空。

道中の秘境率が多すぎて、絶景に慣れ過ぎというか、なんなら少し

飽きてきた感さえ否めぬ時がたまにあるのだけど、ここはもう

レベルが違う。

今まで生きてきた中で間違いなく1番の風景。

秘境経験値が完全にアップデートされた感がある。 

 

 ヒンデゥ・クシュも見えちゃったし、次から次へと信じられない風景が

スライドショウを見ているかのように移り変わって行き、

なんかもうすご過ぎて、処理しきれなくて、その一瞬一瞬にいちいち

絶叫していた。

 

車で来れて良かった、車が戻って来て本当に良かった。

凄まじい悪路の中、私達をどこまでも連れて行ってくれるランクル

安定感は半端じゃないし、こんな所に辿り着いたという達成感、

旅の充実感がこれほど満たされるのも、ここワハン回廊がダントツだ。

 

あの一件の傷は完全にここで癒され、完治しました。
                     
                      ≪山写真≫