G2DOKKA-WANDERLUST

ドイツ発。親子3人車中泊放浪旅のキロク

2020年東欧トルコ車中泊の旅_⑧黒海のゆりちゃん

 

この日また適当にフラフラして、たどり着いた所は

真っ青な海が広がる、静かなビーチ。

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土曜日なのにそんなに込んでいなくて、波も穏やかでとても綺麗だった。

淡水が流入する河口域に、いい感じに深くて広いくぼみが出来ていて

天然の冷たいお風呂みたいで気持ちよかった。

 

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息子は終始水遊びでそこら中をうろちょろしていて、10mぐらい前方に

座っていたトルコ人の親子(母と娘)から、たまにドイツ語で話しかけられていた。

私達の会話を耳にして、ドイツ人と分かったのだろう。

トルコではドイツ語が話せる人と遭遇するのはよくある事なんだけど

しばらくしてから、なんと息子とその娘さんが日本語で会話しているのが

耳に入って来た。

なぜ、こんな超どローカルで、名もない小さなビーチに

日本語が話せる人がいるのか!

興味津々でさっそく挨拶しに行くと、その娘さん、まあ流暢な日本語を

話す事。

しかも6歳になるまでドイツに住んでいたことがあって、お母さんは

ドイツ語が話せて、娘さんはアメリカ人と結婚していたことがあり

英語も流暢に操るトリリンガルだった。

色々話も弾み意気投合したところで、近所にあるという滞在先に

お招き頂いた。

彼女たちは、イスタンブールから一時休暇で遊びに来ていて

親戚が暮らすこの浜辺の村に、小さな一軒家を借りて滞在していた。

トルコもコロナで長らく続いた移動の制限がやっと緩和されたところだったので

ようやく来ることが出来たと喜んでいた。

 

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彼女たちも着いたばっかりで、あまり食べるものがないのよねなんて言いながら、

それでも用意して頂いた物の中に、日本ではスベリヒユという

ちょっと肉厚なクレソンのような植物に、ヨーグルトをてんこ盛りにかけて出してくれた。

母子はお茶漬けをすするように、何食わぬ顔で食べていたけど

私的にはその量と、食べ方が衝撃的だった。

 

それにしても彼女、日本語がうますぎる。

自己流で習得したと言うから、もっと驚きだ。

そして二人きりで話している時に、彼女の口から信じられない出来事の

数々が物語られた。

 

 話の内容はこうだ。

日本語・英語・トルコ語を操る彼女は、とある公的な機関で、

事故や事に巻き込まれたトルコ国内の外国人旅行者をサポートする

役目についている。

そしてそこでは、日本人の関係者にゆりちゃんと呼ばれているらしい。

 

で、その働いている場所が関係しているのかは分からないが

ある日、トルコの大統領を暗殺するという情報がどうにかして彼女の

元に届き、この事を事前に側近の耳に入れておくことができたので

暗殺は失敗に終わったらしい。

事実上、彼女が阻止したんだと言っていた。

そして、それを疎ましく思っていた誰かが

その時妊婦だった彼女を殺そうとして、

彼女は道端でお腹を刺され、一命は取り止めたものの

お腹の中の赤ちゃんは助からなかった。

トルコの大統領には、何度も何度も手紙を書いたらしい。

私はあなたを守ったが、あなたは私から家族を奪ったと。

夫婦は深い悲しみに暮れる中、事件から3か月後

今度は夫がその事件を思い詰めるあまり、ある日突然

急に心臓が止まって亡くなってしまったらしい。

二人の家族を次々に失ってしまった彼女。

生きていればその息子は、うちの息子と同じ年だと言っていた。

私はこの話を聞いて、涙を流さずにはいられなかった。

しかし彼女は淡々と語るのだった。

ふむ。

その時は話にのめり込み過ぎて、疑いの余地もなかったのだけど、後から思ったのは

もし私が彼女だったら、

それが何年何十年前の出来事であっても

涙なしでは語れないと思うし、第一初対面の旅行者に

そんな重い話はしない。

他にも自殺した父親の話とかも出てきた。

 

もしそれらの話が本当だったら、物凄く不運な人生を歩んでいるけど

それでもなお、力強くまっすぐに生きている素晴らしい女性。

作り話だとしたら、完全に虚言壁、妄想癖がある痛々しい女性。

 

私は今だにどちらか分からない。

真実は、どちらでもいい。

 

ただあの日、あの青い海でスバラシイ出会いがあったという事だけ

胸に刻んでおこうと思う。

 

 続