2020年東欧トルコ車中泊の旅_⑨黒海のおじさん達
次なる場所も、もちろん黒海のどこか。
10日ほど黒海トリップが続いていて、すでに私は飽きて来ていた。
それに追い打ちをかけるように、今回旅の目的地であったグルジアが
コロナ対策で国境を閉鎖すると方針を変え、テンションがた落ち。
来週にはグルジア入りして、山の方へ行って暑さから逃れようと
話をしていたところだったのに、残念で仕方なかった。
だからと言って、引き返すわけにはいかず
あと1ヶ月程、ゆっくりトルコを旅しようということになった。
7月5日。
海岸が途切れて、崖の上に道が続くようになってきた。
ビーチに下りれる気配が一向にないので、日も暮れだしてきたこともあり
寝床探しの為、途中で海を見下ろす崖にある空き地に入って行った。
ちょっと先を見ると、すでに先客がタープとテントを張ってそこで
お茶を飲んでいた。
一応その人達に挨拶して、私達も近くに車を停めて寝るということを伝えた。
するとそこの1人のおじさんが、車を誘導したりと色々手伝ってくれて
無事に駐車完了。
ハッサンという名のこのおじさんは、とてもテンションが高く、
かなり人懐っこい人で、私達が車から降りるなりお茶に誘ってくれた。
ちなみにここは、携帯の電波が一切入らないところだったので
困った時のグーグル翻訳が一切使えない。
私達は全くトルコ語が話せないし、彼らも英語やドイツ語が話せない。
この後3日程彼らと過ごすことになるのだけど、その間の会話が
全部ゼスチャー、もしくはトルコのガイドブックに載っている単語を
指さしながらの会話。
それでも意思疎通を図ることはできたけど、終始この方法というのは
結構疲れた。
ハッサンはイスタンブールから休暇で訪れていて、この崖からさらに
上がって行った所にある村に、実家があると言っていた。
そして海へのアクセスがいいことから、ここでキャンプをして
数日寝泊まりしていた。
入れ替わり立ち代わりで、色んな人がこのキャンプに訪れては
帰ってゆく。子供連れの家族、羊飼いの親子、釣り人。
息子より3つか4つ年上の男の子たちも連日遊びにやって来て
息子と覚えたての英語でがんばって交流していた。
「ワッツユアネイム」「マイネイムイズ・・・」
お互いそれが精いっぱい。
だけど、言葉は重要じゃない。
子供達はすっかり意気投合して、海で遊んだり、釣りしたり
羊飼いの仕事を観察したり、本当に楽しそうでキラキラしていた。
私達も海で遊んで、海から上がると当たり前のように私達のご飯も
用意してあって、夕暮れ時に釣りをして、お茶を飲んで・・・
お世話になりっぱなしだった。
ここのおじさん達の間では、酒が一滴も出てこなかったので
グダグダにならないのが本当に良かった。
海から上がって来て、冷えたビール!ではなくて
サモワールでお湯を沸かして、アツアツの紅茶を淹れるんだから
渋いったらありゃしない。
異国情緒が満載。
3日目。
朝ごはんを一緒に食べて、ひと泳ぎして私達はキャンプを去った。
おじさん達はもっと居ればいいのにと引き止めたが、
私の人疲れが理由で、移動することになった。
こういう出会いはとても楽しいものなのだけど、もてなされ過ぎると
一人にしてくれー、となってしまう私の性質。
あと一日いたら、不機嫌になりそうだったので
まだ楽しいうちにお別れをした。
息子は子供達との別れを惜しんで泣いていた。
こんな日の事を、将来息子が覚えてるのか分からないけど
世の中にはこんな世界もあるという事が、記憶の片隅にでも
残っていてくれたらなーと思う。
続